2011年4月3日日曜日

甲状腺癌について

ソース:ベラルーシにおけるチェルノブイリ原発事故後の小児甲状腺ガンの現状

0.概要
この資料は、原発からの距離と健康(甲状腺癌)との因果関係を示しています。
健康への影響については、汚染の状況や、食生活をはじめとする生活環境などによって大きく異なると思いますが、この資料をもとにいろいろ考えてみたいと思います。

1.ベラルーシ共和国について
ベラルーシ共和国は旧ソビエト連邦の国家で、国境からチェルノブイリ原発(現ウクライナ)までは非常に近く、原発周辺30kmの立ち入り禁止エリアの半分ほどはベラルーシ共和国領内、という位置関係にあります。
ベラルーシ共和国全土をみると、チェルノブイリ原発から400km~500kmの圏内に収まります。これを日本にあてはめると、福島から関西までの(やや広い)圏内ということになります。

2.ベラルーシ共和国全土での甲状腺癌の発生状況について
年代事故前
(1975-1985)
事故後
(1986-1996)
大人(15歳以上) 1342 4006
子供(15歳未満) 7 508

人口も医療技術も認知機会も異なるので、上記の表で事故前と事故後の単純な「比」を求めてもあまり意味はないと思いますが、

  • 甲状腺癌についてみた場合、大人より子供への影響が顕著である。
  • 甲状腺癌についてみた場合、大人への影響もある。(※1)

この二点のことが言えるのではないかと思います。

3.高汚染地域での小児甲状腺癌の発生状況について
次に、ベラルーシ共和国全土ではなく、ベラルーシ共和国内で最もチェルノブイリに近い州であるゴメリ州での小児甲状腺癌の発生状況について考えてみます。ゴメリ州は全域がチェルノブイリ原発から200kmの圏内に収まります。これを日本にあてはめると、福島から東京までの圏内ということになります。
次に,ベラルーシ共和国における小児甲状腺ガンの発生頻度についてみると,事故前は小児10万人あたり年間0.1件と,世界のそれとほぼ類似の値を示していた.しかし,90年1.2件,92年2.8件,94年3.5件,95年4.0件,96年3.8件と明らかに上昇していることが判明した.そこで,これらの年度別発生頻度を,高汚染州であるゴメリ州に限定してみると,90年3.6件,91年11.3件,95年13.4件,96年12.0件と,91年以降は世界的平均の100倍以上にも達している.
ここで、事故後10年(1995年)の時点で、小児10万人あたりの発生頻度(死亡者数ではないので注意)が年間13.4人というデータが示されている。通常の発生頻度が小児10万人あたり年間0.1人ということなので、100倍以上という非常に大きい影響が生じていることがわかります。

参考まで、「小児10万人あたり年間13.4人」とはどのような状況なのかを認識するために、他のリスク指標もいくつか調べてみました。(ソースの記載がないのはご容赦ください)

殺人による死者発生率(日本:平成14年)1.1人/10万人・年
火災による死者発生率(日本:平成11年)1.7人/10万人・年
交通事故による死者発生率(日本:平成10~19年平均)8.7人/10万人・年
交通事故による死者発生率(香川県:平成10~19年平均)16.3人/10万人・年
自殺による死者発生率(日本:平成22年)24.9人/10万人・年
肺がんによる死者発生率(日本:平成11年)41.2人/10万人・年

4.大人はどうなのか
仮定になってしまいますが、子供だけでなく、大人にはどのような影響が生じるのかも考えてみたいと思います。

ベラルーシ共和国全体では、大人の甲状腺癌発生率は事故後に約3倍になっていました(※1)。高汚染地域(ゴメリ州単独)でのデータがないのですが、高汚染地域では発生率が3倍以上になると思われます。

これがどういうことなのか、ちょっと考えてみます。


他のリスク増加要素と比べると、
原発事故の影響で甲状腺癌になるリスクは3倍以上になる可能性がある。
岩手県民は、大阪府民に比べ脳卒中による死亡リスクが2倍。
10代で喫煙を開始すると、肺癌になるリスクが6倍。
20代前半で喫煙を開始すると、肺癌になるリスクが4.7倍。

確率で表現すると、
40代前半の男性の場合、甲状腺癌になる確率は5万人に一人だったものが、原発事故の影響で5万人に三人(以上)になる可能性がある。40代前半の女性の場合は、甲状腺癌になる確率は1万人にひとりだったものが、原発事故の影響で1万人に3人(以上)になる可能性がある。

人数で表現すると、
全国の昭和45年生まれの男女190万人のうち226人以上の方が原発事故の影響で甲状腺癌になる可能性があり、全世代では数千人の方が原発事故の影響で甲状腺癌になる。


5.私見
私は、甲状腺癌に関してはそれほど危機感は感じませんでした。
ただ、これはあくまで[東京在住・30代後半・男性・既婚・子供なし・喫煙暦20年弱]という私の個人的感覚にすぎません。


6.追記
今回は、甲状腺癌についてだけ考えてみました。皮膚や、神経、呼吸器、消化器、循環器、生殖器、胎児への影響については、これから随時調べ、考えていきたいと思います。

7.追記2 2011/04/05
wikipediaには『甲状腺癌の典型的な潜伏期間は約10年』という記載がありました。(原典不明)
それが正しいのであれば、この事故後10年の統計データをもとに危険性について考えても、あまり意味はないことになります。
他の(1996年以降の)統計データがあれば、是非教えてください。

補記
※1:人口・医療技術・認知機会等の要因では3倍の差は生じない、という未検証の仮定を前提とします。

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