「少しの放射能は体にいい」というトンデモ説につける薬No.3 。田中優さんが講演で使っている戦後の自然死産率グラフ。大気圏核実験が盛んだった時代、「直ちに人体に影響しない」はずの放射性降下物レベルで明らかに死産率が上昇。星川淳氏は、田中優氏(おそらくこの方)が講演で使用しているグラフを紹介し、(1960年~80年の)自然死産数の不自然な増加を、当時盛んであった大気圏核実験による放射性降下物の影響と説明しておられます。(田中氏のグラフ、星川氏の文章にある「自然死産率」は誤りで、正しくは「自然死産数」だと思われます。)
確かに、田中氏のグラフには自然死産数の不自然な増加がみられます。これが本当に大気圏核実験による放射性降下物の影響によるものなのであれば、福島原発の事故は今後の自然死産率に非常に大きな影響を与えることが予想されます。
そこで、自分でも政府統計資料で確認してみました。(田中氏のグラフにある自然死産数ではなく、自然死産率で考えてみたかったので。)
まず、政府統計資料の『7-2 年次別にみた市部-郡部・自然-人工別死産数』から、全国での死産数をグラフにしてみました。
ピンクの線が自然死産数、黄色い線が人工死産数、紫色の線が合計の死産数です。
(田中氏のグラフはこのグラフとほぼ一致していると思います。)
次に、政府統計資料の『7-3 年次別にみた市部-郡部・自然-人工別死産率(出産千対)及び全死産中に人工死産の占める割合』から、全国での死産率(出産千対)をグラフにしてみました。
ピンクの線が自然死産率、黄色い線が人工死産率、紫色の線が合計の死産率です。
1966年付近の死産数・死産率が特異な値となっている理由は、1966年が「丙午」にあたるためです。「丙午」の年に女児を出産することを避けるために、出産数と妊娠数が減り、人工死産率が増えるのです。(昭和になっても、迷信がこのようなかたちではっきりあらわれるというのは興味深いですね。)
しかし、何故「丙午」の年に自然死産率まで増えているのでしょうか。
それは、人工死産が社会的事情によって自然死産として報告され、そのままスクリーニングされずに統計資料に反映されているからだと私は考えます。もしそうであれば、そのような統計資料から、自然死産率の変化を正しく読み取ることは果たして可能なのでしょうか。そして、大気圏核実験による放射性降下物の影響が自然死産率に与える影響を論じることは可能なのでしょうか。
私は、大気圏核実験による放射性降下物の影響が自然死産率に与える影響が皆無だとは考えていません。ただ、この政府統計の自然死産率の統計データは、大気圏核実験による放射性降下物の影響が自然死産率に与える影響を考えるための資料としては不十分であると考えています。もし、田中氏のグラフがこの政府統計資料を元に作成されたものであるのであるならば、そのグラフも大気圏核実験による放射性降下物の影響が自然死産率に与える影響を考えるための資料としては不十分だと考えています。
ご指摘ありがとうございます。4月上旬のTweet直後に「1948年の中絶解禁が死産数に取り入れられた影響」を教えられ、Twitterからは削除していましたが、初心者なのでTwitpicの削除を忘れておりました(さきほど削除)。ちょうど同時期にスターングラス博士の下記分析を目にし、スライド02がよく似たパターンだったので、国内データで相関するものと早合点して田中氏のグラフを引用しました。田中氏にも講演などで使わないよう伝えてあります。(星川)http://bit.ly/hPJaDj
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